なぜ電線が長いと電圧が下がるのか?―電圧降下の仕組みと測定方法
同じコンセントから電源を取っているのに、一部の機器がパワー不足だったり、正しく作動しなかった経験はありませんか?あるいは長い延長コードを使って遠くの機器を動かした時、電力が弱まったように感じたことはありませんか?
これは気のせいではなく、実際に電圧降下(Voltage Drop)という現象が起きているからです。本記事では、電圧降下が発生する原理、家庭でもできる測定方法、そして日常で電圧降下を減らすための実用的な対策について解説します。
電圧降下とは?
電圧降下とは、電流が電線を流れる際に、その抵抗によって電圧が低下する現象のことです。電流は電線を流れるとき、抵抗によって一部のエネルギーが熱として失われ、結果として機器側に届く電圧が下がってしまいます。
この現象は特に、照明機器、冷蔵庫、モーターなどの機器で顕著に現れ、動作不良や性能低下、モーターの加熱などの原因となります。
電圧降下を引き起こす主な要因
- 電線の長さ:長ければ長いほど、抵抗が増える
- 電線の太さ:太いほど、抵抗は少ない
- 電流の量:流れる電流が多いほど、電圧損失が大きくなる
- 負荷の種類:ヒーターやモーターなど高出力の機器は特に影響を受けやすい
家庭でできる電圧降下の測定方法
デジタルマルチメーターを使えば、誰でも簡単に電圧降下を測定できます:
- 機器の電源を入れる前に、コンセントの電圧を測定
- 機器を作動させ、同じコンセントで再度電圧を測定
- 差分が「電圧降下」です
例:作動前が229V、作動中が216Vであれば、電圧降下は13V。これは無視できない数値で、高出力機器では性能低下や故障の原因になります。
電圧降下を防ぐ・改善するポイント
- 可能な限り短く、太い電線を使用する
- リール式延長コードは必ず全て引き出して使用する
- 大電力機器は専用回路に直接接続する
- 電圧に敏感な機器にはAVR(自動電圧調整器)やUPSを使用する
電圧降下の計算式
電圧降下は以下の式で計算できます:
V = I × R(電圧降下 = 電流 × 抵抗)
電線の抵抗 R は次のように計算します:
R = (ρ × L) / A
- ρ(ロー):導体の抵抗率(銅の場合 約0.0175)
- L:電線の往復長さ
- A:電線の断面積(mm²)
この計算式を使えば、施工前に予想される電圧降下を見積もり、適切な電線規格を選定できます。
まとめ:電線が長い=抵抗が増える=電圧が下がる
電線が長くなるほど、電流は抵抗によりエネルギーを失い、電圧が下がります。電圧降下は基本的な測定や計算によって把握でき、正しい配線と使用方法で予防することが可能です。
これから電線を選ぶ際には「長さ」だけでなく、「太さ」と「電流量」も考慮することを忘れないでください。電力効率と安全性は、その小さな選択から始まります。