アマゾンは本当に「地球の肺」なのか?科学的事実チェック
アマゾンの熱帯雨林は「地球の肺」とよく呼ばれ、地球上の酸素の大部分を生み出していると広く信じられています。しかし、この表現は科学的にどれほど正確なのでしょうか?実際にアマゾンが地球の酸素にどの程度貢献しているのか、表現の由来や誤解、最新の研究をもとに検証していきます。
1. なぜアマゾンは「地球の肺」と呼ばれるのか?
アマゾンは世界最大の熱帯雨林であり、約550万平方キロメートルの面積を持っています。1960〜70年代以降、環境保護運動やメディアによってその保護の重要性が強調され、「地球の肺」と称されるようになりました。ただし、生理学的・生態学的観点から見ると、この比喩は完全には正確ではありません。
2. アマゾンはどれくらい酸素を生成しているのか?
アマゾンの熱帯雨林は地球上の陸上植物の生物量の約10%を占め、毎年光合成によって大量の酸素を生成しています。しかし、重要なポイントは以下の通りです。
- 総酸素生成量: アマゾンは光合成により地球の酸素の16〜20%を生み出すとされている
- しかし純酸素供給はほぼゼロ: アマゾン内部の有機物の分解や植物の呼吸によって、生成された酸素の大半が消費されるため
つまり、アマゾンは大量の酸素を作るが、それをほぼ自ら消費しているため、大気中の酸素量への純粋な貢献は非常に少ないのです。
3. 大気中の酸素はどこから来ているのか?
現在の地球大気中の酸素の多くは、海洋のプランクトン、特にシアノバクテリア(藍藻)によって生産されています。これらの微生物は数十億年前から酸素を生成しており、今でも地球全体の酸素の50%以上を担っています。
- プロクロロコッカス(Prochlorococcus): 海洋で最も重要な光合成生物の一つ
- トリコデスミウム(Trichodesmium): 窒素固定と酸素生成を同時に行う浮遊性微生物
つまり、私たちが吸っている酸素の多くは海から来ているのであり、森林からではありません。アマゾンの役割はむしろ象徴的といえます。
4. アマゾンが重要である理由
- 炭素の貯蔵源(カーボンシンク): 毎年数十億トンのCO₂を吸収し、地球温暖化の抑制に貢献
- 生物多様性: 地球上の既知の種の10%以上がアマゾンに生息
- 気候調整機能: 蒸散作用により、地域および地球規模の降水パターンに影響を与える
したがって、酸素の生産以上に気候の安定、生態系のバランス、炭素の貯蔵という観点でアマゾンは極めて重要な役割を果たしています。
5. 結論:科学的観点からのファクトチェック
- 「アマゾンは地球の酸素の20%を供給している」という主張は誇張されている
- 実際の純酸素供給量はほぼゼロ
- しかし、炭素の貯蔵、気候調節、生物多様性の保全という点で代替のない存在である
私たちがアマゾンを保護すべき理由は、酸素を供給しているからではなく、地球の生態系の安定と持続可能性を守るためです。「地球の肺」という表現は象徴的な意味としては価値がありますが、科学的にはより正確な理解と表現が必要です。