ディペギング(Depegging)とは? ステーブルコインの安定が崩れるとき
暗号資産市場において、ステーブルコイン(Stablecoin)は通常、米ドルなどの法定通貨に連動し(例:1ドル)、価格の安定を保つ役割を担っています。しかし、この連動が崩れる現象をディペギング(Depegging)と呼びます。本記事では、ディペギングの定義、原因、実例、そして対策について詳しく解説します。
ディペギングとは?
ディペギングとは、ステーブルコインの市場価格が設定された基準価格(多くの場合1ドル)から乖離することを意味します。ペグ(peg)は「固定する」という意味であり、ディペギングはその固定が外れる状態です。たとえば、USDCが$0.92に下落したり、$1.08に上昇した場合は、ディペギングが起きているとされます。このような価格乖離は、投資家の信頼を失わせ、市場に大きな衝撃を与えます。
ディペギングが起こる原因
ディペギングの原因はさまざまですが、主な要因として以下のものが挙げられます。
- 準備資産の不足:ステーブルコインが法定通貨や資産で十分に裏付けされていない場合。
- 市場の不安:悪いニュースやハッキング、運営の不透明さなどによる売り圧力の増加。
- 流動性危機:大量の引き出し要求に応じられず、買い戻し不能に陥るケース。
- アルゴリズムの失敗:アルゴリズム型ステーブルコインの設計ミスや市場操作による崩壊。
主なディペギングの事例
1. Terra Luna(UST)崩壊事件(2022年)
USTはアルゴリズム型ステーブルコインで1ドルを維持するよう設計されていましたが、構造的な欠陥と大規模な売却により価格は$0.1未満に急落。結果としてLUNAも暴落し、甚大な損害が発生しました。
2. USDCのディペギング(2023年)
シリコンバレー銀行(SVB)の破綻により、USDCは一時的に$0.88まで下落。わずか数日で価格は回復しましたが、ステーブルコインの安全性に対する懸念が広まりました。
ディペギングが市場に与える影響
- 投資家の信頼喪失:「安全資産」とされたステーブルコインが不安定になると、暗号資産市場全体の信頼性が低下します。
- DeFiサービスの崩壊:多くのDeFiプロジェクトはステーブルコインを担保に使用しており、ディペギングによって連鎖的な清算が発生する可能性があります。
- 市場流動性の減少:交換媒体としての信頼が薄れることで、取引全体が縮小する恐れがあります。
ディペギングを防ぐ/対応する方法
1. 100%の準備資産体制
現金や短期資産で100%担保されたステーブルコインは、ディペギングに強い耐性を持ちます。定期的な監査と透明性が信頼を維持します。
2. アルゴリズムの改良
アルゴリズム型ステーブルコインには、より優れた需給調整機構や、部分的な担保と組み合わせたハイブリッド設計が望まれます。
3. リスクの分散
投資家やDeFiユーザーは、USDT、USDC、DAIなど複数のステーブルコインを併用し、特定コインへの依存を減らすことが重要です。
ディペギング後に回復できるのか?
ディペギングが起きたからといって必ずしも崩壊するとは限りません。実際、USDCは迅速な対応と信頼ある準備金によりすぐに価格が回復しました。しかし、USTのように設計上の欠陥や信頼喪失により回復不能に陥るケースもあります。安定性の鍵は構造の強さと危機管理能力です。
まとめ:ステーブルコインの安定性は市場の信頼の要
暗号資産市場の持続的な成長には、信頼性と安定性が不可欠です。ステーブルコインはその基盤であり、ディペギングは市場全体への警鐘でもあります。開発者は設計の強化と透明性の確保、投資家はリスク理解と分散戦略が求められます。ディペギングの本質を知ることは、より安定した分散型経済への第一歩です。